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福音と宗教 Ⅱ

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680ページ  
2017年10月1日発行

本書『福音と宗教』成立の過程と著作の主旨については、本書の上巻になる『福音と宗教 Ⅰ』の「まえがき」で述べました。そして最後に置いた「第一部への結び」で、上巻の「第一部 諸宗教から福音へ」ではキリスト出現までの紀元前の時代を扱い、下巻の「第二部 福音の場から見た諸宗教」で、キリスト出現以後になる紀元後の時代を扱うことを予告しておきました。今ここに本書下巻となる『福音と宗教Ⅱ』をお届けし、キリストの福音が世界に宣べ伝えられる時代に、福音と諸宗教がどういう関係になるのかを、考察して見たいと思います。 上巻の最後に置いた「第三章 キリストの福音 ー その成立と告知」で、十字架につけられたナザレのイエスを神が復活させてキリストとされたという「キリストの出来事」において、神の救済の働きが成し遂げられたという報知が、地中海地域のローマ帝国世界に告知された歴史を概観し、そのキリストの福音の証言である新約聖書各巻の諸文書が成立した紀元後の一世紀から二世紀初頭までの時代を取り扱いました。それを受けてこの下巻の最初の「第四章 キリスト教史における福音」では、そのキリストの福音を信じた者たちの共同体が形成した教会で行われる宗教活動によって、「キリスト教」と呼ばれる宗教が形成された二世紀以降の歴史を概観し、そのキリスト教の現代に至るまでの歴史において、キリスト教を形成する原動力であった福音がどう関わっているかを論じています。

続く「第五章 宗教の神学」で、大航海時代以来キリスト教諸国もキリスト教文化圏以外の国や地域との交流が始まり、そこで行われているキリスト教以外の諸宗教の事実に触れて、いったい宗教とは何かという反省が起こり、キリスト教文化圏において宗教学という新しい学問が普及した時代を扱います(第一章「宗教とは何か」を参照)。この時代にはキリスト教文化圏の学者や思想家、とくにキリスト教の神学者が、この問いに取り組んで、この問いに対する神学的な考察を深めていきます。第五章はこの問いに取り組んだ代表的なキリスト教神学者の思想を考察して、わたしたちの宗教に対する理解の参考に供します。 「第六章 現代の宗教問題 ー 宗教の多元化と世俗化」では、混沌とした現代世界における宗教の多元化と世俗化から生じる問題を考察して、わたしたちキリスト者の進むべき方向を見定めようとします。そして最後の「終章 働きとしての神」において、福音を信じ、キリストにあって生きる者が「神を信じる」というとき、その神はどのような神であるのか、これまでのキリスト教の信条や教義に縛られることなく、神を語ろうとします。神を語ることが神学ですが、ここでキリスト教という宗教の神学ではなく、キリスト教以前のキリストの福音から出る神学の一つの試みとして読んでいただければ幸いです。

以上、上巻の序章から下巻の終章までが本著『福音と宗教』の本論ですが、本論で十分扱えなかった福音と仏教との関わりについて、「附論 福音と仏教」で取り扱うことにしました。附論とした理由は、私事になりますが、著者の年齢からしますといつ書けなくなるか分かりませんので、とりあえず本論を書き上げて出版できる態勢を完了し、時間が与えられるならば西方のキリスト教と並ぶ東方の世界宗教である仏教を取り上げたいと考え、ネット上では本論終章までを「先行版」として発表しておりました。幸い「福音と仏教」を書き上げる時間が与えられましたので、それを附論として本論に添えて刊行する運びとなりました。「附論 福音と仏教」の主旨は、附論の冒頭に置きました「はじめに ー 附論への序言」と題する節をご覧ください。

(本書「まえがき」より)

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